ギリシャ

ギリシャでの緊急支援

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教育は希望のすべて Vol.01(2017.04)

ギリシャに暮らす難民・移民の子どもの数は2017年現在、2万1,000人と推定されます。その多くは、辛い経験や、難民としての厳しい生活環境や先の見えない不安により、深い心理社会的な苦痛を抱えています。また、子どもたちの多くが、その年齢に関わらず何年もの間、教育の機会を失っています。

Clothes for Smilesの活動資金のうち、ユニセフを通じた子どもたちの教育環境改善プロジェクトに寄せられた一部が、このような厳しい状況に置かれた子どものための緊急教育支援に活用されています。

ギリシャに足止めされている、保護者の同伴がないなど、特にリスクが高い子どもたちに対して実施されている、母国語やライフ・スキルを含む教育は、紛争や貧困から逃れた彼らが困難に立ち向かう強さと日常生活を取り戻し、新たな人生を再出発するための機会をもたらします。

ユニセフギリシャ事務所で教育支援を統括する井本直歩子が活動をご報告します。

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アフガニスタンを離れる前まで、7人兄妹のコバディ一家のちょうど真ん中のハディアは7歳で、ユニセフから支給された水色のリュックサックを使って学校に通っていました。しかし、すぐに紛争が激化し、町中で爆発が相次いだ時、ハディアの両親は7人の子どもを守るために、国を離れる決断をしました。

アフガニスタンを出てイランに辿り着くまで、コバディ一家は密輸業者に従い、町から町を移動しました。雨や雪が降りかかる中、両親は下の2人の子どもを抱え、ナツメヤシの林を潜り抜けました。時には、道中を共にした親切な人たちがもう1人の子どもを抱えて歩いてくれたこともありました。一家は家を出てから20日かかってようやくイランからトルコに入り、そしてギリシャの島に辿り着きました。7人の子どもをぎゅっと抱きしめて。

難民キャンプでの生活を経て、一家は他の難民たちと共にギリシャ北西の町、イオアニナのホテルでしばらく暮らすことになりました。そして2017年1月、これらのホテルで暮らす難民の子どもたちを対象にした非公式教育の学校が、ユニクロの資金サポートのもと、ユニセフの支援でオープンしたのです。現在この学校では、シリア、イラク、アフガニスタンなどの国から来た約150名の子どもたちが学んでおり、コバディ兄妹の7人のうち、まだ2歳なので通えない一番下の子を除く、6人も毎日通っています。

生徒の中には、一度も学校に行ったことがない子どももたくさんいます。もう6年も内戦が続いているシリアや、紛争がそれ以上続くイラクやアフガニスタンでは、学校に行く機会が極端に限られていたためです。そんな子どもたちのために、この非公式学校では、アラビア語やダリ語などの母国語の読み書きを難民の先生が教え、さらに子どもたちがヨーロッパで生きていくための英語、ギリシャ語、さらに他に道徳などの授業も展開しています。

9歳になったハディアは、学校が好きでたまらなく、バスが迎えにくる20分も前から待ち切れずに並んで待ちます。

「ダリ語も、英語も、算数も、全部大好き!」

教室にいると、子どもたちみんながとてもハッピーで、本当に熱心に学んでいるんです。1月の開校からわずか3-4か月足らずで、彼らの学習能力は驚くほどのスピードで上がっています。ハディアも最初はシャイで片言しか話さなかったのに、今はもう私に英語でペラペラと話しかけてくるレベルになっています。この学校の支援が多くの子どもの人生を確実に変えていると実感しています。

現在、ハディアのような就学年齢の難民の子どもたちは、ギリシャにおよそ1万5千人います。その子どもたちは、母国の紛争から逃れ、ギリシャに辿り着いてから今まで、平均で2.5年間、学校に行く機会を閉ざされてきたのです。「一番大切なことは教育」と子どもも親も口を揃えます。

ギリシャ政府のプログラムで、難民の子どもたちもギリシャの学校に通える制度はありますが、その実施のスピードは遅く、まだ多くの子どもたちが正式のギリシャの学校には通えないでいます。また、幼稚園児や15歳以上の子どもたちはこのプログラムの対象外になっています。

ユニクロの支援で運営されているイオアニナの学校のように、ユニセフの非公式教育プログラムでは、こうした現体制のギャップを埋める支援をギリシャ全土でこれまで2,000人以上を対象に行っています。

さらに、対象になっているのは子どもたちだけではありません。ユニクロ支援の非公式学校では、子どもたちの両親にも英語を学んでもらい、これらのヨーロッパでの生活の後押しをしています。コバディ一家の両親も一日置きに学校に通っています。

7人のお母さんのフォージィさんは、顔をほころばせます。

「この幸せをどうやって言い表していいかわからない。私も生徒として教室で学んでいるんですもの!今まで一度も学校に行ったことがなかったのに。」

そしてこう続けます。

「人生はまだまだとても辛い。子どもたちの将来が心配で仕方がないです。彼らにご飯を食べさせてあげられるか、彼らがちゃんとヨーロッパで仕事を見つけられるか・・・。教育だけがせめてもの望みです」

今回のレポート担当:
ユニセフギリシャ事務所教育部門チーフ 井本直歩子

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Vol.01(2017年4月)

教育は希望のすべて