セルビア

中途退学、早期離学を削減する

Report

後日公開

About Project

[セルビア] 復学して仲間を支えるリーダーに Vol.04(2017.02)

Clothes for Smilesが支援するユニセフの早期離学防止プロジェクト。
今回はセルビア南東部より一度は退学した生徒が2年後にプロジェクトの支えで復学し、模範的存在として活躍するようすをご紹介します。

ドロップアウト防止といった共通のゴールに向かって、共に活動する先生、教員と生徒たち。
右から3人目がピア・リーダーとして仲間を支える生徒、マリオさん。


「3年前のことです。1年生のとき、一度この技術系の学校を退学しました。友だちもいて学校は楽しかったけれど、いろいろな問題があって勉強を続けられなくなりました。私はミュージシャンもしていて、父と一緒に家族を支えているため、授業をたくさん休みました。学校を辞めたくはなかったけれど、しかたなかったのです」


こう語るのは、セルビア南東部ヴラディチン・ハンの学生、マリオさん。マリオさんは、生活保護を受けるロマの家庭に生まれました。両親に定職はなく、一家は結婚式での音楽演奏で収入を得ています。ドラムを演奏するマリオさんは、父親と一緒に各地で演奏をし、家計を支えています。


生計を立てるために子どもが学校を辞めるといったことは、マリオさんに限らず、多くのロマの子どもたちにあることです。こうした状況を踏まえ、ユニセフ・セルビア事務所、セルビア教育政策センター、セルビア教育・科学開発省が立ち上げたのが、「学校からの退学・早期離学防止」プロジェクトです。プロジェクトを実施する学校は、十分な人材を有していること、生徒の大多数にドロップアウトのおそれがあること、学校に取り組む熱意があること、地域レベルで地元の機関や団体と協力経験があるかといった基準に基づき、10校が選ばれました。マリオさんが復学したのはこのうちの1校です。


チームとして生徒を支える

プロジェクト実施校では、教員と校長、教員の指導役である指導主事が、ドロップアウト防止チームを作ります。最初の取り組みとして、防止チームは、全教員に対し、学校は生徒たちが卒業できるように、そして職に就くのに必要な資格が取れるように支援する役割がある、ということへの意識を高めなければなりません。次に、全教員がドロップアウトのおそれがある生徒を特定する方法を学びます。こうした取り組みを受けて、保護者との協力も深まっています。また、より高いレベルを求める生徒のニーズと可能性に見合うような補習を実施することにもなりました。


防止チームは、マリオさんの復学を支援できると判断し、マリオさんを訪ねました。チームのメンバーは、マリオさんに勉強を続けることの重要性を説いたほか、両親も支援しました。こうして、マリオさんは学校に戻って勉強を続けることを決めました。


2年間の空白を経て学校には戻ったものの、マリオさんは別の問題に直面しました。2歳年下の同級生と机を並べるという事実を受け入れなければなりませんでした。さらに、父親との演奏があるときは、授業を休まなければなりません。またもや学校に来なくなってしまうおそれがありました。教員たちは、マリオさん自身は学校に通いたくとも、一方で、家族を養わなければならないという問題に直面しました。そこで防止チームは、マリオさん向けのドロップアウト予防計画を作成しました。マリオさんの担任のミリカ先生が重要な役割を担っています。他の教員と一緒に、マリオさんが欠席した授業の内容やほかの授業の内容も織り交ぜつつ、マリオさんに学習の進捗を伝え、マリオさんの学ぼうとする姿勢を引き出すよう、授業を行っているのです。


「今はすべてが順調です。成績は、学年平均の4.0で、Bクラスです。今でも、毎週末、オブレノバツで演奏しています。毎週金曜日の早朝に家を出て移動し、結婚式で演奏して、月曜の早朝5時に帰宅しています。それから学校に行くのはとても厳しいです。疲れていけないときは、先生と相談したように、その分の授業をあとで受けています」とマリオさんは話します。


担任変更という初の試み

生物、生態学、公民を教えているミリカ先生は、はじめはマリオさんの担任ではありませんでした。ドロップアウト予防チームは、マリオさんの前任の先生とその後の2人の先生を経て、ミリカ先生を担任にしました。予防チームは、担任を変えることで、クラスの雰囲気を変えることができると考えたのです。指導主事で、ドロップアウト防止チームのコーディネーター役を担うロヴォルカ先生は、クラスの生徒の多くにはしつけ面での問題があり、学校はそれに対処しなければならなかったと言います。


「最初に、担任変更を行いました。私が知る限り、少なくとも当校では、こうした取り組みは初めてです。クラスのコミュニケーションがうまくいっておらず、雰囲気がだんだんと悪くなっており、学校全体として、この状況に対処する必要がありました。また、いくつかの科目の教員変更も行いました。そうすると、状況が大きく変わったのです。生徒をご覧いただくと、ミリカ先生と生徒たちがうまくいっていることをお分かりいただけると思います。しかし、生徒ひとりひとりが置かれている状況は全く異なるので」と続けました。


お手本となったマリオさん

「今はすべてが順調です」とマリオさんは語ります。


復学したマリオさんは、学校の1年目を無事に終えました。この経験は、マリオさんに、とても良い影響を与えました。一度は学校を辞めたマリオさんは、今や、他の生徒たちから信頼される相談役になっています。ロヴォルカ先生は、マリオさんには、他の子どもたちに良い影響を与える力があると感じました。そして、マリオさんに、ドロップアウトしそうなある生徒の相談相手になってほしいと頼んだのです。この生徒は、問題すべてにうまく対処でき、学校に通い続けています。


マリオさんの学校の取り組みは、セルビア西部のズラティボルでプロジェクト・トレーニングが実施された後に起こっています。学校は、生徒によるピア(仲間)支援チームを立ち上げ、このチームには学校の全クラスから1名の生徒が参加しています。ピア支援チームは、先生の協力を得ながら、学校でのさまざまな問題を解決しています。マリオさんはこの取り組みで積極的な役割を果たし、チームリーダになりました。退学したことは、今や記憶の彼方の出来事です。そして、自分の将来に明るい気持ちを持っています。


「将来、整備士になりたいので、自動車電気工の授業を受けています。実務研修も受けるし、大学に行くかもしれません」と熱く語るマリオさん。


マリオさんが相談相手になっていた友達のゾランさんは「もし、マリオが家に来て学校に戻るように勧めてくれなかったら、学校にはもう行かなかったよ」と話します。二人の言葉から、仲間が与える影響が、いかに重要かおわかりいただけると思います。彼ら二人のやりとりを受けて、二人が通う学校では、ドロップアウトのおそれのある生徒たちを支援するために、ピアチームが作られました。生徒たちには、将来への明るい兆しが見えています。


今回のレポート担当:
Misa Stojiljkovic for UNICEF

バックナンバー

Vol.04(2017年02月)

[セルビア]復学して仲間を支えるリーダーに

Vol.03(2016年03月)

[セルビア]ムハメッドの夢の実現はすぐそこに

Vol.02(2015年01月)

[セルビア]子どもたちが学校を続けられるように

Vol.01(2013年12月)

[セルビア]中途退学への取り組みを視察 コミュニティセンターとモデル小学校