セルビア

中途退学、早期離学を削減する

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後日公開

About Project

[セルビア]子どもたちが学校を続けられるように Vol.02(2015.01)

Clothes for Smilesは、ユニセフを通じて小学校を途中でやめてしまう子どもたちを減らす活動を応援しています。
ユニセフはパイロットプロジェクトとして、学校から離れていきそうな子どもを早期に見つけ、必要な支援を子どもたちや学校に提供しています。そのプロジェクト実施校でのようすをご紹介します。

図書館のテーブルに座った男の子4人組、楽しそうに冗談を言いながら笑い、からかい、サッカーについて語り、まさに12歳の男の子そのものです。

ミルコ、ラザール、ヴェリコ、スルビスラヴの4人は、本当に仲良しです。教室でも、学校の隣にあるサッカー場でボールを蹴るときと同じように、先を争って質問に答えようと手を挙げます。しかし、1年ほど前は、4人のようすはかなり違っていました。

実は、この仲良し4人組にミルコはいなかったかもしれないのです。4人の中で一番背が低く華奢なミルコは、学校で悪戦苦闘していました。だんだんと不登校になり、学校に来てもトラブルを起こしていました。発話障がいがあることが状況をさらに悪くしていました。負の悪循環にはまってしまったミルコは、自分の問題行動によってさらに他の子どもたちからも孤立していったのです。

リュプツェ・スパナッツ小学校の校長、バンジャ・タナスコビック先生にはこのようなことはめずらしいことではありません。
「1学年でたいてい1人か2人はドロップアウトしそうになります」と校長先生は話します。
タナスコビック先生は、ロマの家庭に育った少女のことを悲しそうに話してくれました。その少女は小学校を卒業することができなかったのです。小学校卒業という最低限の学歴がなければ、その後の就職や生活は厳しいものとなります。

リュプツェ・スパナッツ小学校のあるベラ・パラカは、丘やラベンダー畑に囲まれたのどかな地域です。しかし、そこに暮らす1万2000人のうち多くの人びととってここでの生活は大変厳しいものです。失業率が高く、賃金は安く、希望が持てない、セルビアでもっとも貧しい地域なのです。
この地域のかなり多くの住民がロマの人々で、ほとんどはもっとも厳しい環境におかれています。

ミルコの母親であるダニエラさん(44歳)は、生活保護に頼りながら、息子と15歳の姉のジェレナを育てています。
「生活は苦しい。家だってもう倒れてしまいそうよ」とダニエラさんは言います。
このような暮らしは、ダニエラさんが子どもたちのために望んだものではありません。彼女は息子が学校を欠席しはじめたことを本当に心配していました。
「私はミルコに学校に行きなさいと言い続けました。教育が、学位とよい仕事を得るためには欠かせない本当に大切なものなのです。」

ミルコの家族と学校からの支援がミルコの状況を変えました。
「みんな、ぼくに“変われ”っていうんだ」とミルコは笑います。
同じように、ミルコに対する周囲の考え方も変える必要がありました。彼や同じような子どもたちがうまくやって行ける場所に学校を変えてゆくのです。

経験豊かな5年生の担任 ヴィダ先生は、ミルコの可能性を引き出した人物です。

「私は、彼の心を開こうと努力しました。スピーチセラピストや心理カウンセラーを呼んで支援してもらいました。そして、よい方向に導いてくれそうな子どもたちをミルコに近づけるようにしたのです。私は子どもたちに、みんなで協力してミルコを助けよう、勉強だけでなくて友達付き合いを全部含めて、ということを伝えました」

先生は、ミルコの宿題や社会への適応を助けた母親のダニエラさんに「協力優秀賞」をおくりました。

学業的にもミルコには目覚ましい変化がありました。先生は、満足そうにミルコの成績表をカバンから出して見せてくれました。

ミルコは、ラザール、ヴェリコ、スルビスラヴの友達3人が、自分の社会性や学業にとって大切だとよく分かっています。その証拠に4人はいつも一緒にサッカーをして遊んでいます。
ミルコの体育の先生であるヴラスティミール先生は、ミルコがよい成績を残せるよう、運動場で遊ぶのと同じように教室でもうまくやっているかどうかいつも気にしています。運動場で遊ぶには、まずよい成績を取らなくちゃならないよと伝えているのです。
「チームの一員になるためなら、なんだってやってくれるのよ。」と先生はクスっと笑いながら話してくれました。

先生、児童、家族そして専門家を巻き込んだこの学校の包括的なアプローチは、概ねよい結果を生み出しており、リュプツェ・スパナッツ小学校が早期ドロップアウト削減プロジェクトのパイロット校の候補になったのは自然なことでした。

リュプツェ・スパナッツ小学校をはじめセルビア国内の10校がこのプロジェクトに参加しています。ユニセフは、ユニクロの支援を受けて、地域のNGOと一緒にこのプロジェクトを実施しています。

子どもたちのドロップアウトの兆候を早期に発見するシステムを構築することがプロジェクトの目標の一つです。パイロット校では、保護者との連携や子どもたち同士の協力関係を構築することにも取り組んでいます。考え方や方法を変えることによって、教師たちはドロップアウトを防ぐことに責任を持つようになったのです。様々な局面で、学校はユニセフやパートナーNGOの支援を受けることもできます。

リュプツェ・スパナッツ小学校では、校長や教員とともに専門家がドロップアウト防止チームに参加していています。彼らは、悩んでいる子どもを発見し、状況が悪化する前に手を差し伸べるのです。このチームはまた、学校の教育の質全体も改善しようとしています。

「私たちはかなり以前から何が問題であるか認識していました。このプロジェクトが私たちに力を与えてくれると望んでいます」と、スピーチセラピストのジェレナさんは言います。

パイロットプロジェクトは2014年4月に開始され、同年9月に学校での実践が始まりました。プロジェクトは学校に関わるすべての人々を巻き込み、子どもたち同士が助け合うとともに、保護者やコミュニティとも協力していくことを目指しています。2016年10月のプロジェクトの終了時までには、モデル校はすべての子どもたちを受け入れ、支援できるオープンな環境に変わっているはずです。

どんなに厳しい環境にあろうと、学校を卒業することが、その子が正しく人生を踏み出す最初のスタートになります。
ミルコは、正しい方向に進みつつあり、友達とサッカーを楽しんでいます。
「昔の彼は関係ないよ。今はぼくらの友だちさ」とスルビスラヴは言います。

よい友だちを持ち、社会が彼を受け入れ、そして成績も伸びたことによって、ミルコにとってどんどんよい状況が生まれています。でも実は、これはミルコが変わったからなのではなく、学校や周囲の他の人びとが変わったことの結果なのです。

今回のレポート担当:
ギー・ド・ローニー

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